98/99シーズンを振り替える

今シ ーズンのブンデスリーガはバイエルン・ミュンヘンに尽きる。リーグ戦では去年の借りを返しチャンピオンに返り咲き、またチャンピオンズ・リーグでは決勝戦でイングランドのマンチェスター・ユナイテッドに惜しくも負けたものの決勝までは進出した。ブンデスリーガにおいて今シーズン、バイエルンがトップの座に名前を連ねなかったのは第1節と第16節の2度だけ。16節にトップを譲ったレバークーゼンにも2−0で勝利して力の違いをみせつけた。そしてそのまま首位をひた走り、GW後の第31節、ヘルタ・ベルリンとホームのミュンヒェン・オリンピック・スタジアムで対戦し、1−1と引き分けたが2位のレバー・クーゼンとの勝ち点差が10と開き、3試合を残し優勝をきめた。そして終わってみれば勝ち点15差の圧勝となり去年2位の雪辱を果たした。(去年の優勝はカイザースラウテルン) 98-99シーズン結果

バイエルンは今シーズンに限ってよい成績をあげたのではなく、15回のタイトル獲得でも分かるように、これまでのドイツサッカー界を引っ張り、最も成功を収めてきたチームだ。リーグ戦のほかにも、国内のカップ戦で9度優勝し、欧州チャンピオンズ・カップで74年から3年連続で勝利を収め、76年にはインターコンチネンタル・カップも制し世界一のクラブチームに輝いている。

それでは、他のチームを圧倒し続けた98−99シーズンを振り返ってみよう戦力的には去年とさほど変りはないが、今年は監督がヒッツファルトに代わってチームもかわった。ヒッツファルトは、2年前にドルトムントを優勝に導いた監督だ。まず、去年までのスター選手間の争いやいがみ合いが少なくなった。そして、選手に過酷な戦いをさせないために、ローテーションを使い、そしてその意義をわからせようとしたのだ。GKのカーンを除いては、戦術的な理由や体力の消耗を考え、無理のない選手起用を試みた。マテウス、エフェンベルク、バスラーまでもが控えに甘んじることもあり、ファンになじられたりもした。しかしその方法でよかった。水曜と土曜という厳しい日程を組まれた時期に、他のチームは疲れを感じていたのに、バイエルンは全く元気に戦い抜いた。そして、けがによる戦線離脱も、18人もの代表選手という層の厚さでカバーし、チームを優勝に導いた。

そして、国内有力専門紙”キッカー”では、記者投票によりシーズンのMVPを選出しているのだが、98/99シーズンの最有力選手にはバイエルン・ミュンヒェンのマテウスが選ばれた。マテウスは全盛期を彷彿させるプレーをみせ、リーグ優勝に大きく貢献したことが認められ、556票と2位に圧倒的支持を集めて、90年以来2度目の栄誉を手にした。

さらにバイエルンはドイツ国内で最も強いだけでなく、6万人の会員を擁する最大のクラブで、年間で1億6000マルク(約118億円)というすばらしい売上げで、大成功を収めている。観客動員数は2位だったが、やはり今年もバイエルンミュンヒェンが中心となったシーズンだった。日本でも、前までの僕を含め、バイエルン・ミュンヒェンぐらいしか知らないと言う人が多く、ブンデスリーガの中心ではやはりバイエルンである。

一方、チャンピオンズ・リーグはどうなったかと言うと、こちらも劇的な試合となった。早々と優勝を決めたバイエルンは、この試合に照準を定めており、そしてそのとおりの試合を展開した。ヒッツフェルト監督は、マンチェスター・ユナイテッドの攻めを完全に読んでおり、マンチェスターの特徴であるサイドを深くえぐり、そこからクロスがほうり込まれる攻めを、ゴール前でことごとく網に掛けた。クフォーとリンケが2トップのコールとヨークを厳しいマークで封じており、チャンスらしいチャンスも与えなかった。そして攻撃の方も開始6分でバスラーが直接FCを決めてそのあとも、決定的なチャンスを何度も作った。しかし、不運にも見舞われ追加点を奪えない。ショルのシュートはポストを、ヤンカーのシュートはバーをたたいた。それでも、このまま1−0で逃げ切れそうであった。だが、監督の選手交代が試合を動かした。残り10分のところでマテウスを変えたのだ。交代したのはフィンクで、確かに経験ある選手で、また今までもこういうつかわれかたをしている。しかし、やはり最終ラインのバランスが微妙にくるってしまった。少しづつマンチェスターの攻めがでてくる。そしてロスタイム。攻めるマンチェスターがコーナーキックを得る。そして・・・、なんと交代したシュリンガムが右足で決め、土壇場で追いつく。そしてまた、その後に左コーナーをマンチェスターが得る。キッカーのベッカムが蹴ったボールをシュリンガムがおとし、今度も途中交代で入ったソルスチュアーが決める。バイエルンの選手達はピッチに崩れ落ちた。また、ベンチでは、マテウスが呆然と遠くを見つめていた。通算93分での悲劇だった。わずか2分間での逆転。バイエルンの選手やサポーターにはあまりにショックな敗戦となった。

参考:ワールドサッカーダイジェスト、サッカーマガジン