東京外国語大学欧米第一課程ドイツ語専攻
「コンピューターとドイツ語学習研究」(ヨーロッパ言語研究T演習)
担当: 境 一三


TexToysを使って

11月5日の授業でTexToysの二つの機能を使って実際に問題を作ってもらいました。さらに問題を改善してもらうと同時に,この二つの機能のメリット・デメリット,さらにどのような場面で使えるかを考えてメールしてもらいました。

参考にしてください。


土井満喜

これらの問題の有用性は、やはり、ゲーム感覚でできることにあると思う。私自身も、この問題をした時にはむきになって真剣に問題にとりかかった。ここで大事なことは、この問題の場合、ある程度の推測を伴わなければならず、文法知識を総動員して頭を働かすことにあると思う。これによって、ただ知識としてしかなかった文法がより具体性をもって定着するので、外国語学習には有益であると思う。


西村尚志

 Sequitur の特長は、文がどのようにつながって行くのか、つまり文の構造の理解の助けになると言うことです。また、文章の内容をある程度理解していないと出来ないと思います。文章の内容から判断できる場合と、文法的に判断できる場合と2通りあります。

 rhubardは、Sequitur に比べて難しいので、何らかのヒントがあったほうがいいかもしれません。(特殊な単語などは、空欄になっていないほうがいいでしょう。)先生の言われていたように、リスニングと組み合わせるのは、いいと思います。

 限られた語数しか入れられなかったので、問題が作りづらかったです。


新田

Sequiturについて。

自分で新聞をソースにした問題を解いてみて思ったのですが、このタイプの問題を解ける人はかなりの英語力がなければならないと思います。もし僕がこのソフトを使うのならば、hotpotatesで基本的な事をやり、その後で応用の問題をつくるためにこのソフトを使いたいと思います。

rhubarbについて。

このソフトについては訳がないと学習者にとってはかなり苦しいと思います。リンクをはって訳を表示できるといいのでは??


中根洋介

TEX TOYSの使い方について、ということでしたが、正直に言って、あれのみで効率的に勉強できる、という気が僕はしません。なぜなら、あのプログラムでできることは

1、並び替えられた文章を1つにすること

2、記憶しておいた単語を間違いなく打てるか、ということ

だからです。敢えてあげるとすれば、文章の1部から(その文章の意味だけではなく、背景も含んで)全体を把握し、正しく文を構築する能力でしょうか。もしかしたら、たまたま僕が使った題材がニュースの記事であったため、プログラムをフルに生かすことができなかったのかもしれません。


多田佐和子

まず、Sをやって次にRの問題に移るべきだと思う。Sは文のつながりを考えるのに役立つ。例えば、関係詞や代名詞など何を指すかを考える必要がある。

Rは語の暗記が必要となる。似ているけど間違ったスペルを書くとはじかれるので正確さが必要になる。また、ゲーム感覚でやれるので面白く確認ができる。

今回ドイツ語を打ち込もうとしたが、うまくできなかったので英語にした。使ったのはお菓子作りのレシピで、手順に従ってかかれているので、次に何が来るか想像しやすいと思った。レジストレーションキーがないと長い文を入れられないので短くなってしまった。


丸山麻美

メリットとしては、TexToysの問題は文章の再構成を問題にしているので、総合力を試すことができること、また、文脈を考えて次に来る文章を推測するなど、文章力がつくことだと思います。デメリットは、すべてのブランクに単語を入れて、再構成するほうの問題では、記憶力に頼る部分が大きい事だと思います。単語を別枠で表示するとか、日本語の対訳をつけるとかしたほうが、やりやすいのではないかと思いました。

中学校の時に教科書の文章の暗唱などやったことがあったのですが、これにはこのTexToysのブランクの問題が役立つのではないかと思いました。文章を覚えたり、再構成することによって、語感や語法に慣れることができるし、意義深いと思います。


塚田恭子

メリット:文章の内容を覚えられる。例えば私の文章ではベートーベンについての知識を増やすことができる。こういった、ある人物の伝記的内容の文章や、歴史的な出来事についての文章を用いれば、ドイツ語の読解力とともに、さらなる知識も得ることができる。

デメリット:短期間の丸覚えになってしまうので、単語をせっかく覚えても、即座に忘れてしまうのではないか。しかも、Sequiturの方は、何度もやると次に何が来るかを覚えてしまう。

私が対象として考えるのは、日本の中学生のように語学や歴史などを同時期に学んでいる生徒たちである。


恵 幸代

Sequiturを利用し、区切られてランダムに並べられた文章を再構成する学習には、まず文法における基本知識が要求される。学習者は、一つの単語に続き得る単語を、文法的な視点から選り分けなければならない。

さらに文法的な知識だけでは選別が困難な場合、学習者は全体的な文章の流れを予測し、論理的に文を構成させる能力を要求される。

以上二つの能力を高めることが、Sequiturを利用した学習での主な利点である。

次に、Sequiturで学習した後のRhubarbの効果は、まず文章を暗記することにより得られる新出単語の知識や、一つの文章の成り立ちについて考える統語論的知識を身に付けることにある。

記憶漏れの部分については文脈や文法的な知識から予測しなければならないし、さらに正しい綴りを覚える訓練にもなる。

Sequiturのような並び替え問題は、これまでの外国語学習で頻繁に利用してきたが、Rhubarbのように正解の部分だけを提示させるということは、紙面では行えない、コンピューターならではの学習方法なので、とても新鮮に感じられた。


石田

メリット

@rhubarb

では複数のボックスに同じ単語がある場合、その単語を入れると同時にそれらのボックスが開くので残りのボックスに入る答を推測しやすいと思う。

rhubarb を使ったエクササイズでは、学習者はsequitur で読んだテキストの内容はもちろんのこと、語彙と構造も復習することができる。また文脈から推測するというリーディング力もつけることができる。

例)

Gestern *** ich  zu Hause.

学習者はブランクには過去形の動詞が入ることを推測できる。(ドイツ語では2番目の節には必ず動詞が入り、この場合gesternという副詞があるから。)

Asequitur

のすべての単語を覚えていなくても、文法力・語彙力のある学習者(中〜上級)ならばrhubarb ではある程度推測で解くことができる。sequitur では学習者はばらばらになったsegmentを再構築することによって、テキストの構造と筋の通ったテキストの組み立て方を学ぶことができる。

デメリット

逆に、sequitur で文を覚えておきさえすれば、それらの単語や文全体の意味が理解できなくてもrhubarb の問題を解けてしまう。


水野麻衣子

SequiturとRhubarbを使った問題のメリット・デメリットですが、Sequiturのように出ている文をつなげていくという作業は、ドイツ語初心者、上級者を問わずにできるという点で、有効的なのではないかと思います。

また、出来上がった文を熟読して頭に入れた上でRhubarbを解くということは、ドイツ語単語だけを頭にいれるというのではなく、文章の内容を理解するということに繋がるのではないでしょうか。ただ、あまりに長い文章や、難しい単語をたくさんいれてしまうと、とくに初心者にはドイツ語学習としては効果的ではなくなってしまうのではないかとも思います。そういう場合は、Hotpotatoesのように日本語の解説をつけられるといいかもしれません。

私は今回ブラームスについて問題を作成しましたが、例えば「作曲家について学ぶ」など、一つのことをテーマにいくつか問題を作成すれば、より内容の濃いドイツ語学習が可能になるのではないでしょうか。


佐藤智英

 WebSequitur

・HotPotatoesで言うと、JMixに当たる。

・6単語くらいで文を区切ると分かり易い。ウェブページで表示されるときに、あまりに文が長いと、その区切られた文章を読むのに、ボックスの中にカーソルを置いて右側へ持っていかなきゃいけないから。

・次の文章へと繋げるべく、意味のある区切り方を目指したい反面、上記の理由であまりに長くできない。ここをどうすべきかが課題。

・文法や、文章の意味的繋がりを理解させるのに役立つ。

・HotPotatoesと比べると非常に使い方が分かり易い。ちょっとこだわろうと思うとほんの少し複雑になるが。その反面、HotPotatoesの様に、インストラクションを独語にしようと思ったら、自分で文章を考えて、自分で打たなければならない。構造自体は非常に簡単にまとまっているのに、インストラクションを打ち直せたりといった、HotPotatoesに備わっていた機能を8割方持っているという点では評価できる。

・最後の5つだけ先に見せる、という機能に関しては、文章の最後の方を先に見せて、前半部がどんな事を言いたいのか、という内容推測型の問題を作るのに使え、という事なのであろうが、イマイチ実用的な使い方に関しては、謎。アクマデモ、「文章読解をさせる」ということに焦点を当てた問題でしか使えない??この機能に関しては、少し使い方を考えてみる必要がある。

・少し気になったのが、ボタン配置。HotPotatoesでは、次のページへ行くときは「右側」のボタンを、前に戻る時は「左側」のボタンを押させたが、WebSequiturでは逆である。人間の感覚的な問題なので一概には言えないが、HotPotatoesの配置の方が良かったように思われる。

・JMixは一単語ごとに区切って並び替えるという内容で、このWebSequiturでは、長文を適度な長さに区切って並び替えさせる。この性質上3個まで並び替えの文章が提示されるわけだが、そのために、JMixではできた「単語テスト」作成機能は失われてしまっている。あくまでも、「文章を読ませる」という目的に限定される。

・初級者向けに、冠詞や格をクルーにして入れ替えさせる問題を作ってみたが、初級者向けなので一つ一つの文章が短くなり、三つ提示されるモノのうち、二つが大文字で始まったりして分からなくなってしまう事が多い。このような事を避けるためには、次の文章の最初の一単語くらいまで、前の部分に含めておくか、極力一つ一つの文章を長くして、大文字で始まるパターンを減らす必要がある。

WebRhubarb

・ゲーム感覚の穴埋め問題。普通の穴埋めと違うのは、例えば「der」と打ち込むと文章中全ブランクの「der」がオープンになる、という点。

・性質上、冠詞の穴埋め等に使いたい所だが、打ち込むと全てのブランクが開いてしまうので、冠詞の穴埋めには使えない。従って、簡単な初級者レベルの単語推測問題向けと言える。上級者向けに作ると、あまりに推測の幅が広すぎてブランクを埋める事ができなくなるため、不可。

・打ち込ませる単語は、何か一つのカテゴリ内のモノに限定すると語彙練習になる。例えば「体に関するモノ」という風に限定したら、学習者は「眉毛、目、耳・・・」という風に打ち込んでいける。但し、そのようにブランクを開けるために文章を作成するのがちょっと難しい。名詞だとそういった困難さが出てくるが、動詞であれば、学習者に対して「今週の授業でやった動詞」というふうに限定すると、問題が作成しやすいし、語彙練習にもなる。

・ゲーム感覚でやらせるのならブランク多めに、学習メインでやらせるのなら意味あるブランクで少な目に。

いずれのソフトも、主に初級者向け学習教材作成ソフトと言えるのではないだろうか。

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各問題の対象者は、箇条書きで書いた通り、初級者です。

WebSequiturの方は、冠詞をクルーとして、文章構成・前置詞等基本的要素について学ばせるための問題です。

WebRhubarbの方は、基本単語・前置詞・簡単な形容詞をブランクにしました。教室の内容について述べている文章を教科書からひっぱってきたのですが、これに関しては実際の教室配置でやった方が、学習者は教室の中を見ながら、その内容を頭の中で独語化するという作業を行えるため、思考の練習にもなります。例えば、「茶色い教卓」という部分の「茶色い」がブランクになっていたとすると、実際に茶色い教卓を見て「あ、茶色って入れればいいんだ」というように考えさせることが可能になります。

PS 例に漏れず、矢張りタグが打てますね。フォントカラー等を変えることができるのでやりようによっては個性的なページが作れると思います。


蒔田ゆう子

メリット:語学向上のみならず、その文章の内容も暗記によって覚えることができるので、より広範囲な学習が可能になるのではないでしょうか?

デメリット:しかし、その反対に難易度の高い言葉やマイナーな言葉、表現などは内容がどうのというよりもまず、難しすぎて頭に入らないかもしれません。

この問題は、ドイツの有名人を取り扱っています。これは、ドイツ語の文法を一通りマスターした学習者が、語学のためにだけではなく、その言語が話されている国、文化、歴史などについても学べるように作りました。


太田博雄

今回問題を作成してみて、ただテキストを打ち込んだだけで、複雑な操作も必要なく問題が出来上がるというのは画期的だとは思いました。このプラグラムは文もしくはテキストを書く能力を伸ばすのに有益だと思います。Sequiturでは、例えば接続詞の部分でセグメントを区切るようにすれば、接続詞の学習になると同時にテキストの構造、組み立て方を学ぶことができます。また、Rhubarbでは、テキスト全体を書かせることもできますし、学習して欲しい文法事項に絞って、例えば動詞だけを穴埋めさせることができて、使い方次第で可能性はあると思います。また、Sequitur、かなりの部分を穴にしたRhubarbという、簡単、難しいの順序で問題を解かせれば、学習者のモティベーションを保ちつつテキストへの理解を深めていくことができると思います。授業では、テキストを使って授業をし、文法事項や語彙を説明した後、復習の時にこの問題をやらせて、授業で習ったことやテキストについての理解度を高めるのが効果的だと思います。

その反面、今回自分なりに工夫を加えてディクテーションに使える問題を作ってみましたが、このプログラムで作成される問題のバリエーションは、簡単な分、それほど多くはないのではと思いました(料金を払って登録すれば制限がなくなるようですが)。作成の意図を明確に持たないで、ただテキストを打ち込んで、Webに生成するという作業だけでは、Sequiturでテキストを暗記してRhubarbでそれを書くという問題の繰り返しになり、学習者にとっても退屈なものになっていくと思います。


上野

再構成するには、一度元の文を覚えなければなりません。文を覚えるということは、すなわちその言語における、文の構成の仕方(統語論的にも語用論的にも)を、理論としてではなく、実践を通してとらえることが可能だと思います。その点に、大きな利点があるのではないでしょうか。

また、再構成の作業をする際には、単語を覚えることにもつながり、語彙の数を増やすこともあると思います。