東京外国語大学欧米第一課程ドイツ語専攻
「コンピューターとドイツ語学習研究」(ヨーロッパ言語研究Ⅰ演習)
担当: 境 一三


コンコーダンサーの使い方


石田ルツ

1. コンコーダンスソフトを使って,どのようなワークシートが作れるか?

ある副詞を入れる問題を作る。学習者は前後の単語を見れば、それらのカッコにはどの副詞が入るか見当がつく。同時に、その副詞の前後にはどのような単語が頻繁に来るのか分かるようになる。

2. 授業中にソフトが使えるとしたら,学習者にどのような課題を与えることができるか?

日常生活に使える言い回しを練習する課題を与える。

学習者に、身の回りにあるものの名前(LichtやTascheなど)を検索させ、出てきた文をピックアップし、覚えるようにする。

3. 新しい単元に入ったとき,その単元への導入に使えるか?

使えると思う。前の単元では3格しか伴わない前置詞を学習し、新しい単元では3格も4格も伴える前置詞を学習すると想定する。例えば "in" を入れさせる問題を作る。"in" の後に来る冠詞に注目することで、学習者はどういうときに3格で、どういうときに4格になるのかを考える。


太田博雄

課題:コンコーダンスソフトを使って,どのようなワークシートが作れるか,また授業中にソフトが使えるとしたら,学習者にどのような課題を与えることができるかを考えてください。また,新しい単元に入ったとき,その単元への導入に使えるか,使えるとしたらどのようにか,も考えてください。

ワークシートの例

  ・形からみた名詞の性の見分け方の学習

    -heit, -keit, -tion, -ismus, -lein等、特定の語尾を持つ名詞を並べ、それぞれの名詞の性を答えさせる。

  ・haben, werden, seinの変化や位置から、文の時制や態を見分ける学習

    様々な時制や態の文をピックアップし、学習者にそれらを分析させ、時制や態を答えさせる。

  ・動詞の前つづりによる意味の違いの学習

    主要な動詞(kommen, geben, gehen等)をピックアップし、前つづりによって意味がどのように違うかを答えさせる、または前つづりを答えさせる。

 

授業で与える課題の例

  ・前置詞をピックアップさせて、それぞれの前置詞が何格支配であるかを調べさせる

  ・前置詞の格支配(3格、4格)の用法の違い、意味合いの違いを考えてもらう

  ・身体の部分や動物等の単語を入れされ、熟語を見つけてもらう。

 

新しい単元への導入

  単元のテーマとなっている文法事項から重要な例を挙げ、文の中でどのような機能を持つかを考えてもらう。例えば、接続詞がテーマであれば、いくつかの代表的な接続詞を与え、テキストの中からピックアップしてもらい、語順の違いを見つけてもらう。関係代名詞であれば、語順の他に先行詞との関係を見てもらう。その際、あえてテーマを前もって伝えず、単語だけを与えて課題を実行してもらい、これから何を学習するのかを学習者自身に見つけてもらうことも効果的だと思う。


中根洋介

TEXTANAを使うことにより、例えば、ドイツ語特有の前綴りの規則性(性質)を調べることができる。さらに、例えばApfelという言葉を入れて、その言葉を使ったことわざなども調べられる。

また、同じ単語でも文中で違う意味で使うことがあることから、日本語を介さずに、その動詞がどのような意味をもっていると考えられるか、ということを知ることができる。やはり日本語を介してしまうと、多少の意味のずれが生じるので、これは大変重要なことだと思う。もちろん、それはドイツ語初心者向けではなく、他の単語からその知りたい単語の意味を予想できるほどの力が必要であるが。そこから発展して、著者特有の言い回しもわかることができると思う。

TEXTANAを使って読解の予習をするときにも以上ような点に気をつけて予習をすると、ただドイツ語の文章を読んでそれを理解するだけに終らず、調べることが増えるのでそのぶん予習の意味が増す、と思われる。


うえの

コンコーダンスソフトを使って

・ワークシート編

コロケーションや、どの品詞がどの場所(どの品詞に続いて出てくる)に出てきやすいか、などの練習に

使えるのではないでしょうか。

例 頻度を表す副詞

1 適当な文(短文集・文章)をコンコーダンスソフトで頻度を表す副詞を抽出

2 ワークシートの答えとして印刷しておく

3 例えばHotpotatoesのJMixなどで、それぞれの文を単語ごとに並べ替えをさせる。学習者がWeb環境にあれば、PC上で作業させることもできるし、紙に印刷して、学習者に配ることもできる。

4 のちに答えを配布して、学習者に確認させる

 

・授業導入編

例えば、「枠構造」を説明するには、意外と使えるのではないか、と思います。

例 分離動詞

1 あらかじめ教師側で簡単な文(短文集)を作成

2 動詞の基幹を先にコンコーダンサーで抽出

3 文にフォーカスをあて、文末に何かあるのを気付かせる

4 説明していく

(グループでディスカッションなどをさせて、学習者自身に気付かせる、などの方が効果的?)


土井満喜

1.ワークシート(コンピュータなし)での課題

詩などの韻を、検索していったら面白いと思います。

同じ言葉に対して、そのような韻を踏んだ言葉があるのかを見つけることによって、楽しく語彙力がつくと思います。

2.コンピュータがある場合の課題

ある程度の文章を読ませて、そのキーワードを与えるか、あるいは自分で見つけ出して、その言葉を使ってある箇所を拾ってスキャンニングさせる。要約の能力や、ざっと読む練習になるのではないでしょうか。


蒔田ゆう子

問い:コンコーダンスソフトを使って,どのようなワークシートが作れるか?

例えば、それが前置詞の学習だとしたら、その前置詞の働き、文章の中での役割、他の品詞との関わりを授業前に予め理解することができるので、そのテキストの内容は少し学習者よりレベルの高い、機能動詞や他の文法がたくさん入っているテキストを作るべきではないでしょうか。

問い:また授業中にソフトが使えるとしたら,学習者にどのような課題を与えることができるかを考えてください。

教師と一緒に、コンコーダンスを用いて学習することができるので、予習時点で既にワークシートを使って、既にその前置詞の機能は理解していることを前提にすると、従来の詰め込み式授業よりも、自分の気づいたこと、わかったことを教師と一緒になって話し合い、考えていける発見型授業は、学習者のより高い理解度につながると思います。

問い:また,新しい単元に入ったとき,その単元への導入に使えるか,使えるとしたらどのようにか。

使えると思います。その単元で習う文法事項をコンコーダンスを使い、まず一緒に考えていき、それから実際のテキストにはいる。この順番により、新しい単元に対する学習者のやる気消失はまぬがれるのではないでしょうか。


多田佐和子

TXTANAを使用する授業

① ワークシートを使う場合

  すでに授業で行なった単元についての単語の確認をする場合、テクスターナの結果をヒントとして与えて、どの単語で検索されているかを当てる。文脈からどのような単語が推測できるかやってみる。動詞や形容詞の語尾など文法を分かっていないと難しいと思う。

② 読解の予習で使う場合

  教師は予習する範囲を生徒に送る。生徒は新出単語の意味を辞書で調べる。その新出単語はどの語と供に使われることが多いかをテクスターナで調べる。その際他のインターネットで参照するページをあらかじめ教師は指示する。動詞の変化がでてきたらそれを書き出しておく。


丸山麻美

(コンコーダンスを使って)

-どのようなワークシートを作る事ができるか。

 例えば、freuenという一つの動詞でも、結びつく前置詞がaufとueberでは意味が異なってきます。それをリストにして、前後の文から動詞と前置詞の結びつき方とその意味の違いをさぐらせるようなワークシートが作れると思います。

-生徒に実際にコンコーダンスを使わせる場合の考えられる課題

 様々な文章の形態(小説、新聞、エッセイ)によってどのように使われる言葉が異なるかを調べさせるような課題が考えられます。動詞など文章によって使われ方が異なってくると思うので、それを調べるような課題が考えられます。

-単元の導入にどのように使う事ができるか。

 ワークシートのところと似てしまいますが、例えば3、4格支配の前置詞の3、4格の使い分けを説明する前に、コンコーダンスを使って調べた実際の文章例を見せておけば、その使い分けをすんなりと理解できるのではないでしょうか。


鈴木晶子

TXTANAを使ったドイツ語学習について

1.パソコンを使って

・動詞の人称変化を推測させる。

(ich, du, erなどをキーワードとして検索させ、直後の動詞の形から人称変化を推測させる。)

・前置詞の格変化を推測させる。

 (各前置詞をキーワードにして、直後の名詞の形から格変化を推測させる。)

・副詞の文中に入る位置の感覚をつける。

 

2.ワークシートで

・あるキーワードを含む文章を羅列し、その単語の意味を推測させる。

・格変化や人称変化を身につけさせる。

(あらかじめ、抜き出した特定のキーワードの直前、直後を空欄にしたプリントをつくり、記入させる。

 

3.読解の課題、予習。

このテーマで、どのように使ってよいか、考えたのですが、分かりませんでした。


森江雄也

<宿題>

例えば、今、英語で3単現のsを教えようとしています。

授業の最初にこう言います。

「今日は3単現のsを勉強します。」

その際に、まず教科書に記載されている文法事項を見ずに、学習指導者が「キーワードのタグにplayと入力しなさい。」というように学習者に指示を出します。

学習者はそのとおり行い、検索結果が出てきます。

そこで学習指導者が「playの前にきている主語は何か調べなさい。」と指示を出します。当然、he, she, it, 人名はそこにはありません。

次に「キーワードをplaysに変えて今と同じようにやりなさい。」と言います。今度はhe, she, it, 人名がそこに入ってきます。

すると学習者は3単現のsについてhe, she, it, 人名のときだけ動詞につくと予想します。

そこで学習指導者は教科書を開かせ、3単現のsについて説明します。

そのように、まず、実際の文章の中で3単現のsがどのように使われているかを学習者に予測させ、それから説明するというようにすれば、コンコーダンスソフトは授業中に使うことこができると思います。これは応用次第で、この前の授業で先生が言っていたように、ドイツ語の前置詞にも使えるし、日本人がよく迷う副詞、否定詞がどの位置にくるのかを見るのにも便利です。

また、教科書よりも先にコンコーダンスソフトを使うことによって、学習者は学ぼうとしていることの規則性がはっきりつかめないはずです。そうした不明瞭さを持たせ、その直後に規則性を学習者に教えれば、それだけ強く印象が残り、学習の効率化にもつながるはずです。

もうひとつ、このコンコーダンスを生かす点として、取り上げる文章をネイティブが作った文章にすれば、なまの言葉に触れることができ、教科書にあるような作られた文章では得られない、自然で新鮮な文章を学習者は読むことが可能になります。ただその際、注意しないといけないことは、学習者のレベルに合った文章を探すことで、これには学習指導者の手腕が

問われます。

ワークシートの使い方についてはよくわからなかったので、 次回の授業でもう一度説明していただけるとありがたいです。


恵 幸代

コンコーダンスソフトが可能にする外国語学習法について

--既知の単語の学習--

例えばvonという前置詞を取り上げて、そのあとにはどのような語が続くか(この場合は前置詞であるので、何格支配であるか)、文中のどの位置に置かれているか、どのような意味で使われているか、周囲の単語にはどのようなパターンが見られるか、などを経験的に学習させる。

--穴埋め問題--

上記の学習とは逆に、取り上げた単語を空白にして周囲の語によるヒントから、どのような単語を埋めることが出来るかを考えさせる。

・疑問点

 今回コンコーダンスソフトを使ってみて、その教材としての有用性に少し疑問を感じました。それは抽出される文章が短いこと、さらにそれが原文のどこから抽出されたのか分からないということによるものです。

 ドイツ語に関しては、前置詞とその格支配や、単語の様々な使用法を学習したいのならば取り出す部分は短くてもかまわないですが、副文や分離動詞、完了形の文章に関しては、係り結びの関係が抽出された部分に必ず収まっているとは限りません。さらに取り出される文章の射程範囲が狭いと文脈が掴めないので、新出単語の意味の学習などには向いていないと思いました。


新田賢太郎

txtanaを使ってできるであろうこと。

専門書を読みたい場合。

頻度係数をつかってどういう単語が多く使われているかを調べ、頻度が高い順にどんどん単語を覚えていき、コロケーション統計をとってその文章に出てくる、英語特有のコロケーションを覚えていくことによって、早く文章が読めるようになっていくのではないかと思います。

中学や高校の英語の授業の場合。

takegiveなどの多く意味を持つ単語の使い方を覚える時、辞書に書いてあることを丸暗記するより、多くの例から演繹的に単語の使い方というものを学ぶ方がより早く覚えれるのではないかと思います。

例えば、中学や高校で使っている英語の教科書からtakeを使った文章全てを集めた資料をあらかじめ生徒に渡し、それを参照しながら教えていけば、生徒は自分が何を分かって何を分かっていないかをすぐに知ることができるのでより効率的ではないかと思います。自分の知っている所と知らない所をマッピングすることは重要では?

まとめとして、ある特定の分野の外国語の力を短期間で上げるのにはとても使えるソフトではないかと思います。そして、どちらかというと文法力よりも語彙力を上げることに使える様な気がします。