文法訳読法について

2003年4月21日プレゼンテーションのまとめ

(文責 D4 上野敦士)

 

0 カレーの作り方

例としてカレーの作り方を挙げましたが、ちょっと分かりにくかったかな、と、自己反省です。もう少し、きちんと論を関連付けて、説明しようと考えていたのですが、正直緊張して、うまくできませんでした。

要点としては、学習者個々の知識レベル、知識欲求、モチベーションといったもの、また、学習者集団の質や個人差、その学習者(集団)に対し、○○のスキルを伸ばしたいから、△△教授法や、カリキュラムを用いる、など、つまりは「学習者」に目を向け、学習者ごとに何をどうすべきかを見極めることが大切である、ということを言いたかったのですが・・・。

 

1 成り立ち

文法訳読法とは、グラマー・トランスレーションメソッド(Grammar-Translation Method)のことであり、グラマーメソッド(文法中心教授法)と、トランスレーションメソッド(翻訳教授法)の2つを組み合わせたものである。

この方法は、元来、ギリシャ語やラテン語の古典を読むために使われていたものであった。理由は後述する2点である。

まず、ギリシャ語やラテン語は、すでに死語(口頭で用いられることなく、書物の中のみの言葉)になっていたこともあり、書物に書かれている内容を母語で理解できればよかったため、この教授法が用いられた。

また、最初にこの教授法を用いて学習した者は、エリート(今のエリートとはちょっと違いがあるでしょう)と呼ばれる、将来の指導者層であった。指導者としての資質を高めるために、ギリシャ語、ラテン語の書物を読まなければならなかった。という背景もおさえておくべき点である。つまり、現在では退屈だ、知識の詰め込みのみにしかならない、という批判のある文法訳読法だが、知的好奇心も高く、知的欲求も高いエリートには、それでも問題はなかった。

 

2 特徴

この教授法の最大の特徴は、まず文法規則や語形変化を暗記し、全ての文を母語に翻訳することにより、内容を理解することである。

 

3 メリット

母語を介することで、外国語と母語の差がはっきりしてわかりやすい。

また、読んで訳させればよいので、教える方は簡単であり、大人数を対象とした教育の場、特に学校での言語教育の場では特にやりやすい。

 

3−1 メリットに対する反論・批判

特に学校教育で行われている、文法訳読法だが、指導者はやりやすい反面、学習者からは、退屈だ、つまらない、という声があがる。なぜならば、最初に述べた、学習者にそれが適しているかどうか、という点から見て、多分、あまり適していないからであると思われる。

教える方は、その場その場で、最も適した教授法を選んで行うべきである。いくつかの選択肢うちから、きちんと目的(たとえばリーディングのスキルを伸ばすなど)を持ったうえで、文法訳読法を行うのであれば、学習者にとってある程度苦痛が伴うことかもしれないが、納得して学習者も取り組めるであろう。しかし、「文法訳読法しか知らない」先生がいて、学習者おかまいなしで行っているのも現実ではあるが。

 

4 デメリット

文法事項を最初に覚えてしまわなければならないため、学習者に負担がかかる。また、授業が単調になり、学習者が興味を失いやすい。

また、リーディングやライティングが中心で、スピーキングやリスニングの練習はされない。

 

4−1 デメリットに対する反論・批判

もともとこの教授法の対象となっていた学習者層と、生まれた背景を考えてみると、これらのデメリットは、デメリットでもなんでもなかった。

ただし、現在の学校教育などの場で行われていることについて考えてみると、学習者に負担がかかること、授業が単調になることは否めないであろう。ただしそれは、3−1で述べたことが原因になっているかと思われる。

また、スピーキング・リスニングのスキルに関しては、きちんと音声的な裏づけを行ったうえで、文法訳読法で扱ったテキストを、音読をする、または聴き取りをするなどのことによって、スピーキング・リスニングのスキルに対するプラクティスにはなりえるだろう。

 

5 文法訳読法そのものへの批判から

文法訳読法では、母語の介在が良くも悪くもある。このことへのアンチテーゼから生まれたのが、ダイレクトメソッドと呼ばれる、ターゲットランゲージのみを用いる(ドイツ語ならドイツ語のみで)教授法が考え出された。これは、次回の担当の方々に・・・。

 

6 まとめ

文法訳読法に関しては、それなりに(?)まとめて発表できたのではないかと思います。反省すべきは、プレゼンテーションのときに、聞いてくれていた他の方々へ、説明が足りなくて、少し混乱を招いてしまったことでしょうか。申し訳ありませんでした。


文法訳読法について

4月21日

渡辺賀尉

1 文法訳読法の成立

文法訳読法とは、グラマー・トランスレーションメソッド(Grammar-Translation Method) であり、グラマーメソッド(文法中心教授法)と、トランスレーションメソッド(翻訳教授法)の2つを組み合わせたものである。

この方法は、元来、ギリシャ語やラテン語の古典を読むために使われていたものであった。

19世紀の半ばになると、ドイツのプレッツによって体系化され、現在のような形になった。

 

2 特徴

 ・まず始めに文法規則や語形変化などを本文とは無関係に暗記する

 ・全ての文を母国語に翻訳することによって内容を理解する

 ・文法用語によって文の分析や説明がおこなわれる

 ・リーディングやライティングが中心で、スピーキングやリスニングの練習はなされない

 

3 メリット

 ・読んで訳させればよいので、指導が簡単である

 ・一度母語に翻訳するので、外国語と母語の差がわかりやすい

 

4 デメリット・批判

 ・文法事項の学習が学習者の大きな負担になる

 ・授業が単調になり、学習者が興味を失いやすい

 ・リスニングとスピーキングが身につかない

 

参考文献

 大沢茂 「現代の英語科教育法」 (南雲堂 1978)

 伊藤嘉一 「英語教授法のすべて」 (大修館書店 1984)

 田崎清忠 「現代英語教授法総覧」 (大修館書店 1995)