Direct Method

2003年4月28日 今井明日香、柘植久美子

 

特徴

・母国語を媒介とせず、外国語のみを使って教授する

・文字や文法の習得よりも音声を優先させる

・実物、絵、動作などによって、外国語と意味を直接連合させる

・文法は帰納的に規則を導き出すようにする

(・・・個々の事例→規則 cf.規則→個々の事例・・・演繹的方法)

・グアン、フィーエトル、ベルリッツらの提唱したmethodの総称

・Q&Aを頻繁に行い、学習者の理解を確認し瞬発的な理解力と発表力の養成をはかる

 

成立の背景

 文法訳読法を現代語教育に取り入れることへの反省・批判

 19世紀後半から20世紀初頭にかけて取り入れられる。20世紀初頭に全盛

 →1902年にフランス・ドイツで公認の教授法として採用され、ヨーロッパ諸国・アメリカへも普及

 →1920年代から30年代には折衷法(Eclectic Method)へと変遷

 

基本理念

〔グアン〕

ゲシュタルト心理学の理論を応用・・・言葉と動作を結びつけ、その連鎖によって学ばせる

〔フィーエトル〕

外国語教育は発音指導から始めるべき

外国語の音声を模倣を通してではなく科学的、組織的に教える

〔ベルリッツ〕

外国語学習は幼児の母国語習得と同じ過程を取るべき

 

メリット

・学習の最初から全て外国語で行うため、生徒を外国語に慣れ親しませることができる。

・翻訳作業をさせないので、外国語での思考が発達する。

・教材が対話や物語を中心としているので、興味を呼び覚ましやすい。

・ヒアリング、スピーキング能力が養成される。

デメリット

・母国語を使用しないため、語句の理解に手間取り、意味の誤認が生じる恐れもある。

機能的文法指導は学習者にとって過大な負担となることもある。

・あまりにも初期の段階から、生徒に外国語で自分の考えを話させることになる。

・幼児が母国語を覚えるのと違って生徒たちはすでに確立した母国語の言語習慣を持っているため、母国語習得の状況を外国語学習の教室において再現することは非現実的である

 

*The Oral Method

・・・Direct Methodの潮流の中からH.E.Palmerが提唱した教授理論

特徴

・言語学習を習慣形成と考え、入門期での正しい言語習慣の確立を重視

・ヒアリング、スピーキングを主要技能と捉える

・入門期(6週間)は口頭作業のみ行い、その間文字は一切見せない

・発音練習、オーラルイントロダクション、テストクエッションなどによる口頭作業

 

基本理念

・言語学習の三段階

 @照合一致(identification)・・・言語記号の意味を知ること、知識の受容

 A融合・結合合体(fusion)・・・言語記号とその意味が溶け合い、密接に結合すること

 B総合活用(operation)・・・言語材料を類推により様々な場面に適用し活用すること

・人間には日常の話し言葉の習得能力が生得的に備わっており、それを目覚めさせて活用することによって第二言語の習得も成功する

 →言語習得の五習性 

  @耳による観察 A口による模倣 B口ならし C意味づけ D類推による作文

 

メリット

・実物提示、実演によって場面に即して教えるので入門期の興味や動機づけを高められる。

・聞く力が養成される。

・入門期は文字学習の負担が軽い。

デメリット

・実演による説明(オーラルイントロダクションなど)には時間がかかる。

・読み書きの指導が足りなくなる。

・教師の負担が大きい

 

現在の教育現場への応用

 Direct MethodもThe Oral Methodもそれを日本の学校で厳密に実践するのは難しいが、これらの流れはある程度の母国語の使用や系統的文法指導の導入といった改善を伴いながら日本の英語教育に大きな影響を与えてきた(Eclectic Method)。今後も「話す・聞く」能力(=「使える英語」)が求められている中で、これらの教授法は修正されつつ広く行われていくと考えられる。

 

おわりに

 今日のプレゼンでの始めの模擬授業は、Direct Methodの雰囲気を掴んでもらうだけでなく、プレゼン自体を具体例→理論と持っていくことで帰納的なものにしようという試みがありました。説明のときにそのことを指摘し損ねましたが、気付いていただけたでしょうか。

 

参考文献

・田崎清忠『現代英語教授法総覧』(大修館書店、1995)

・伊藤嘉一『英語教授法のすべて』(大修館書店、1984)